前章で見た需要の変化を受けて、民泊の供給はどう動いているでしょうか。都心部の一部エリアでは、以前1泊1万円で埋まっていた部屋が、今は7,000円まで下げないと予約が入らない、という単価下落が実際に起きています。
原因は供給過多です。民泊は空き部屋一つでも、届出さえ通れば数日で参入できてしまいます。この参入障壁の低さを背景に、住宅宿泊事業の届出数は2018年の施行時から約28倍に増え、直近では6万件を超えました。副業として参入する個人ホストが急増し、東京都内では同じ最寄り駅から徒歩圏内に50件以上の民泊が並ぶエリアも珍しくありません。同じ土俵に立つプレイヤーが増えすぎて、価格でしか差がつけられなくなっているのです。
しかし、この供給過多は都心部に偏っているだけの話です。地方の需要が伸びているにもかかわらず、民泊の供給は東京23区だけで全国の4割強を占めたままです。
【都心部と地方部の民泊の需給の違い】

つまり、都心部は単価下落を招くほどの供給過多が起きている一方、地方部は伸びている需要に供給がまったく追いついていない空白地帯が広がっています。同じ「民泊」というゲームでも、どの盤面を選ぶかでまったく違う戦い方になるということです。
これは、市場が明確に二極化しているだけであり、民泊全体が儲からなくなったわけではありません。地方はエリアを選ぶ精度さえあれば、まだ十分にブルーオーシャンが残っています。都心で戦うなら、価格競争に巻き込まれない差別化力が問われる。それだけの違いです。
これは、民泊市場全体が迎えているフェーズの変化でもあります。累計6万件を超える届出のうち、すでに廃止された件数は2万件を超え、廃止率はおよそ3割から4割にのぼります。届出は増え続けている一方、同じペースで市場から退場していく事業者も積み上がっているのです。「物件さえ確保すれば一定の収益が見込めた」という時代から、「どこで、どう差別化するかを見極めた者だけが残る」という時代に移り変わっていることが、この数字からも読み取れます。
つまり、これからの民泊投資に求められているのは「始めれば儲かる」という発想ではありません。「どのエリアで、どんな目的で、どう運営するかを見極める力」です。
このコースの第2部からは、まさにその戦略の土台となる、あなた自身の目的設定に入っていきます。
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