第12章:数値の重ね合わせで、エリアの姿を立体的に見る

賃貸投資であれば、賃料相場という一つの数字を見れば、ある程度の判断がつきます。しかし民泊は違います。属人性(誰が運営するか)とエリア性(どこでやるか)による差が非常に大きいため、個別の数値一つに惑わされると、判断を誤ります。単体の指標をいくら眺めても、そこから得られる示唆は限られています。複数のデータを重ね合わせて初めて、その数字は真価を発揮します。

エリア選定において、私たちは主に5つの指標を見ています。収益性、地価、観光需要、競合物件数、そして不動産取引件数です。

大切な前提が2つあります。ひとつは、指標は「今の水準」だけでなく「変化率」も見るべきだということ。もうひとつは、指標は単体で見るのではなく、複数を重ね合わせて初めて意味を持つ、ということです。

まず水準と変化率の違いです。同じ「観光客数100万人」というエリアでも、去年から横ばいのエリアと、去年から30%伸びているエリアとでは、これから先の伸びしろがまったく違います。逆に「観光客数10万人」という小さなエリアでも、前年比で急伸していれば、今はまだ小さくても数年後には化ける可能性があります。水準だけを見て「小さいから見送り」と判断すると、この伸びしろを取りこぼします。

ここからが本題です。この5つの指標は、単体で眺めているだけでは意味を持ちません。掛け合わせて初めて、意味のある数値として使えるようになります。

例えば、観光客数という指標と、競合物件数という指標を重ね合わせてみましょう。「観光客数÷競合物件数」という割り算をすると、物件1件あたりが受け止めている需要の大きさ、つまり「参入余地」が見えてきます。この数字が大きいエリアほど、需要に対して供給が追いついていない、空白地帯である可能性が高くなります。

そしてこの参入余地は、単独のエリアだけを見ていても、その大小の意味が分かりません。似たような知名度を持つ別のエリアと比べて、初めてポテンシャルの差が見えてきます。

たとえば、箱根と山中湖を比べてみます。どちらも首都圏から近く、富士山や温泉・湖といった観光資源を持つ、似た知名度のエリアです。仮に観光客数がそれぞれ○○万人、○○万人、競合物件数が○○件、○○件だったとすると、参入余地(観光客数÷競合物件数)は箱根が○○万人/件、山中湖が○○万人/件、という具合に数字が出てきます。名前の知名度だけを見ていては分からなかった差が、この重ね合わせによって初めて可視化されるのです。

こうしてデータを重ね合わせ、空白地帯を見極める力そのものが、次章以降で扱う「物件の値段」や「実例」を正しく読み解くための土台になります。

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