第2章:民泊を成立させている制度を理解する

賃貸なら、物件を借りればすぐに貸し出せます。民泊は違います。人を泊めて対価を得られるようになるまでに、4つの関門を順番に越える必要があります。①その土地でそもそも営業できるか(用途地域)、②どの制度で参入するか(住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊)、③消防基準を満たせるか、④保健所の審査を通せるか。この4つをすべてクリアして、初めてスタートラインに立つことができます。

【賃貸と民泊・旅館業の開業までのプロセスの違い】

①用途地域:用途地域の種別に応じて、そもそもその土地で営業ができるかが分かれます。旅館業は都市計画法上の制約が強く、工業専用地域はもちろん、住居専用地域でも原則として営業できません。住宅宿泊事業(民泊新法)は「住宅」としての使用を前提とするため、住居専用地域でも比較的実施しやすい仕組みですが、自治体の条例で独自に制限を上乗せしているケースも少なくありません。いずれの制度を選ぶにせよ、この壁を越えられなければ、そもそも営業自体が認められません。エリアを検討する最初の段階で確認すべき項目です。

②制度選び:用途地域をクリアしたら、次はどの制度で参入するかを選択します。実際に人を泊めて対価を得るための制度は3つあり、それぞれ性質がまったく違います。

【民泊・旅館業運営における制度の違い】

一般に「民泊」という言葉が指しているのは、この中の住宅宿泊事業法(民泊新法)のことがほとんどです。届出だけで始められる手軽さの代わりに、年間180日という営業日数の上限を背負います。旅館業法の許可を取れば原則として年間365日営業できますが、その分玄関帳場(フロント)の設置や客室数の基準など、施設としての要件が重くなります。特区民泊は、国家戦略特区に指定された一部地域限定で、旅館業法の基準を一部緩和しつつ日数制限のない営業を可能にする折衷案です。つまりここは、「日数を我慢して手軽に始めるか」「初期投資をかけて日数の制約から解放されるか」というトレードオフです。

③消防基準:制度を選んだら、建物側の準備です。別荘や自己居住用としてすでに使われている建物でも、宿泊事業として使う場合は、自動火災報知設備や誘導灯といった追加の設備投資が求められることがあります。この基準は、住宅宿泊事業でも旅館業でも共通して必要です。特に古民家や築年数の古い戸建てでは、この追加コストが数十万円単位で発生することも珍しくありません。物件価格の安さだけで飛びつくと、ここで足元をすくわれます。

④保健所審査:消防基準をクリアして、ようやく保健所の審査に進めます。ここを通過して初めて、人を泊められるようになります。この審査は近隣の状況や建物の構造によっては通らないこともあります。


こうして無事に開業までたどり着いたとしても、実はまだ終わりではありません。この2つの制度は、開業後の収益構造にも、それぞれ違う形で影響を及ぼし続けるからです。次章では、その中身を見ていきましょう。

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