ワンルームマンション投資の世界では、年収3,000万円は紛れもなく上客です。銀行の担当者が頭を下げて融資を持ちかけてくる側の人間です。属性が良く、団信も通り、金融機関にとってはリスクの低い優良顧客そのものだからです。
この感覚のまま民泊・旅館業に来ると、痛い目を見ます。ここでは年収3,000万円は、上客でも何でもありません。同じ「上客待遇」を受けたいなら、目安は純資産3億円クラスです。桁が一つ違います。
なぜここまで違うのか。ワンルーム投資は、賃料という読みやすいキャッシュフローを、すでに実績のある建物・エリアに乗せるだけの商品です。銀行から見れば、審査すべき変数が少ない。一方、民泊・旅館業は、稼働率もADRも運営次第で大きく変わり、しかも法制度自体が新しく、実績データの蓄積も薄い。銀行から見れば、変数だらけの商品です。だから同じ「良い属性の個人」であっても、求められる担保力・自己資金力の桁がまるごと変わってきます。
実際に窓口に並んでいるローンを、対象となる人物像ごとに整理すると、次のようになります。
【民泊・旅館業におけるローンごとの特徴や金利の違い】

ここで気づいてほしいのは、ワンルーム投資であれば金利1%台がざらにあるのに対し、民泊・旅館業では金利4%クラスのローンも珍しくない、という点です。数字だけ見れば、明らかに割高な借り入れです。しかしここで思考を止めてはいけません。ワンルーム投資の表面利回りが5〜8%程度で語られる世界であるのに対し、民泊・旅館業は、前章で見た通り9%から100%超まで、まったく別の次元の利回りが狙える商品です。金利4%を「高い」と感じるかどうかは、その先に見えているリターンの桁次第です。金利だけを比べて「割高だから避ける」という判断は、実は賃貸投資の物差しを、そのまま民泊に持ち込んでしまっている典型例です。
つまりこの表は、ワンルーム投資のように「良い属性を見せれば銀行が寄ってくる」市場ではないことの、何よりの証拠です。銀行はこちらに頭を下げてくれません。頭を下げるのはこちら側です。しかしその分、得られるリターンの桁も、賃貸とは別格です。この現実を理解しないまま、賃貸投資の感覚で資金調達に臨むと、想定していた融資が下りず、計画そのものが崩れます。
資金という手札は、確かに強力です。ただし、その手札が本当に「強い手札」になるかどうかは、あなたの純資産が、ワンルーム投資の年収3,000万円ではなく、民泊投資における純資産3億円という、まったく違う基準線を超えているかどうかにかかっています。
資金という手札の桁が届かない人にとって、残された最大の武器が行動量です。次章では、その行動量を物件探しにどう使うかを見ていきましょう。


