ペンションを経営が成功すると、いくらくらい稼げるのか。
開業を考える人が、まず知りたい数字でしょう。ただ、ペンション経営者の年収に全国共通の答えはありません。客室数や宿泊料金、営業日数、食事を出すかどうか、借入の額、家族の働き方によって、同じ売上でも手元に残るお金が変わるからです。
大切なのは、売上をそのまま年収として考えないことです。売上からは、予約サイト(OTA)の手数料や食材費、人件費、借入の返済などが差し引かれます。家族が給料なしで働いている時間も、見えないコストとして考慮しておく必要があります。
この記事では、ペンション経営で売上から手元に残るお金がどう決まるのかを、モデルの数字で紹介します。記事中の数字はお金の流れを理解するためのモデルで、特定の地域や物件の収益を約束するものではありません。
先に結論
ペンション経営の年収は、「客室数×宿泊料金×稼働率」だけでは決まりません。食事や人件費、光熱費、修繕費、返済に加えて、家族が働く時間まで考えたうえで、事業の利益と返済後に残るお金を分けて試算することが大切です。

想定読了時間:10分 | 更新日:2026年10月8日
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民泊物件を探すペンション経営の年収は「売上」「利益」「残るお金」に分けて考える

個人でペンションを営むと、事業の利益と、生活費に回せるお金が混ざりがちです。宿泊や食事などの売上から運営にかかる経費を引いたものが、事業の利益です。そこから借入の返済や設備への投資、税金、手元に置いておく運転資金を差し引いて、ようやく生活費に回せる額になります。
減価償却費のように、その年には現金が出ていかない費用もあります。ただ、建物や設備はいずれ取り替えが必要です。帳簿の上で利益が出ていても、返済や給湯器・屋根の修繕が重なると、現金が足りなくなることがあります。黒字なのにお金が残らないのは、利益とお金の流れ(キャッシュフロー)がずれるためです。
家族で営むペンションでは、1人の年収に見える金額を、実際は夫婦2人が早朝から夜まで働いて得ていることがあります。世帯として残るお金と、1人あたりの働きに見合う金額は、別のものです。
| 数字 | 計算の考え方 | 何に使うか |
|---|---|---|
| 売上 | 宿泊+食事+物販など | 需要と売る力を見る |
| 営業利益 | 売上-運営の経費 | 施設の運営が成り立つか |
| 返済後に残るお金 | 営業利益-借入の元金と利息など | 現金が残るか |
| 生活費に回せるお金 | 返済後に残るお金-修繕の積み立て・税金など | 生活費に回せる目安 |
売上は、客室数・単価・稼働率から試算する

売上の基本の式は「売れる客室の数×営業日数×客室稼働率×平均の客室単価」です。1人あたりの料金で売るなら、1室あたりの平均宿泊人数も入ります。食事付きなら宿泊と食事の売上は別に計算され、子ども料金や連泊、キャンセルも実際の売上を左右する要素です。
たとえば6室、年間300日営業、稼働率35%、平均客室単価2.4万円なら、客室の売上は約1,512万円です。これは計算の例で、地域の相場ではありません。繁忙期の数字をそのまま1年に広げると、平日や閑散期、休館日、オーナーの休みの分だけ、売上を大きく見積もってしまいます。
単価を上げようと食事や体験を増やすと、材料費や手間も増えます。大事なのは売上の単価より、追加したサービス1件あたりに残る利益(粗利益)です。厨房や接客で1日に対応できる数にも限りがあり、売上を伸ばせる幅はそこで決まります。
| モデルの要素 | 仮定 | 1年分への反映 |
|---|---|---|
| 客室数 | 6室 | 売らない部屋は除く |
| 営業日数 | 300日 | 休館・工事の日は除く |
| 稼働率 | 35% | 月ごとに変わる |
| 平均客室単価 | 2.4万円 | 割引・人数を反映 |
| 客室の売上 | 約1,512万円 | 計算の例(相場ではない) |
経費は、食事と人件費で大きく変わる

経費には、予約サイトの手数料や食材費、清掃・リネン、光熱費、人件費、修繕費などが含まれます。食事付きの施設なら、材料費だけでなく、仕込みや配膳、片付け、衛生管理にかかる時間も入れておく必要があります。
家族の労働を0円で計算すると、人を雇ったとたんに赤字になる計画ができてしまいます。オーナーがフロントや料理、清掃、送迎、経理を担っているなら、その仕事を人に頼んだときの人件費が、家族の労働の目安になります。この金額を入れてはじめて、事業が生む利益と、自分が働いて得る対価を分けて見られます。
光熱費は、建物の大きさと気候に大きく左右されるものです。寒い地域では、客室が空いていても、凍結を防ぐための暖房が欠かせない場合があります。古い建物では断熱の改修で光熱費を下げられることもありますが、工事費を何年で取り戻せるかは建物によって違います。
| 経費 | 売上に連動する部分 | 固定的にかかる部分 |
|---|---|---|
| 予約サイト・決済 | 予約に比例 | 契約の基本料など |
| 食材・清掃 | 宿泊人数・滞在に比例 | 最低発注量・在庫のロス |
| 人件費 | 稼働に連動する部分 | 常勤スタッフ・社会保険など |
| 光熱費 | 稼働と季節で変わる | 基本料・凍結防止 |
| 修繕 | 急な故障 | 計画的な積み立て |
ペンション経営の収支モデル|売上1,900万円から手元に残るまで

ここでは、客室の売上1,512万円に食事や物販などの388万円を加えた、売上合計1,900万円のモデルで考えます。経費は、予約サイトの手数料と決済で180万円、食材・消耗品で300万円、清掃・リネンで170万円、光熱通信で180万円、人件費で360万円、その他の運営費で210万円、合計1,400万円です。返済前に残るのは500万円になります。
年間の元利返済が240万円なら、返済後に残るのは260万円です。ここからさらに、税金や設備の更新、家族の生活費をまかなうことになります。夫婦2人がフルに働いているなら、世帯で260万円を「年収260万円」とだけ表すと、働き方が見えなくなってしまいます。食事や清掃を外注すれば手元に残るお金は減りますが、休みをつくれるかもしれません。
このモデルから分かるのは、売上が1,900万円あっても、生活費に自由に回せるお金はずっと少なくなるということです。物件価格や借入、客室数、営業日数、単価が変われば、残る金額も大きく変わります。
| 収支の項目 | 年間のモデル | 注意 |
|---|---|---|
| 売上合計 | 1,900万円 | 客室+食事など |
| 運営の経費 | ▲1,400万円 | 家族の労働の評価は別に確認 |
| 返済前に残るお金 | 500万円 | 税金・設備投資の前 |
| 元利返済 | ▲240万円 | 借入の条件で変わる |
| 返済後に残るお金 | 260万円 | 年収を約束する数字ではない |
黒字になる稼働率を逆算する

返済まで含めた黒字と赤字の境目は、固定費と返済の合計を、1室売るごとに残る利益で割って求めます。会計でいう損益分岐点は費用だけで計算しますが、ここでは借入の元金の返済も含めて考えます。平均客室単価2.4万円から、予約サイトの手数料や食材、清掃などの変動費を引いて、1室1泊あたり1.4万円が残るとしましょう。年間の固定費と返済が840万円なら、必要なのは600室泊です。
6室×300日で1,800室泊を売れるモデルなら、600室泊は稼働率約33%にあたります。ただし実際には、月ごとの需要の差や1人での利用、子ども料金、キャンセル、修繕も反映させなければなりません。年間の平均で33%を超えていても、出費が先にかさむ冬や閑散期に、現金が底をつくことがあります。
手元の現金が一番少なくなるのは、繁忙期の前の仕入れや採用、広告、税金や保険の支払い、大きな修繕が重なる月です。1年の損益が黒字でも、こうした月を乗り切れるだけの運転資金がなければ、営業を続けられません。
| 稼働率 | 室泊数 | 判断 |
|---|---|---|
| 25% | 450室泊 | 固定費と返済をまかなえない |
| 33% | 約600室泊 | 黒字と赤字の境目 |
| 45% | 810室泊 | 修繕や生活費に回せる余裕を考える |
| 55% | 990室泊 | 人手と清掃が追いつかなくなることもある |
INNsightでは、宿泊施設として使われてきた物件も、許認可の取得状況とあわせて確認できます。客室数や改修の必要性を見ながら、試算に使える候補を探してみてください。
宿泊施設を探す休みの日も、収支の計画に入れておく

朝食付きなら早朝から、夕食付きなら午後から夜まで仕事が続き、チェックアウトの後には清掃が集中します。予約のない日も休みとは限りません。仕入れや修繕、経理、写真の撮影、予約の管理といった仕事があるからです。休日をどれだけ取るかによって、売れる日数、つまり売上の上限も変わります。
夫婦のどちらかが体調を崩したときや、料理の担当が休むとき、繁忙期に短期のスタッフが集まらないときに、営業を止めるしかない体制では、売上はすぐに落ちてしまいます。その人にしかできない料理や接客は強みになりますが、休めない仕組みのままでは長く続けられません。
住まいと職場が同じ建物にあると、仕事とプライベートの境目があいまいになりがちです。オーナーの住まいの防音や動線、家族のプライバシー、宿泊者が使える範囲は、建物の間取りで大きく決まり、開業後に変えるには改修が必要になります。
開業前に確かめたい物件と許認可

ペンションかどうかは名前で決まるわけではありません。提供する宿泊や飲食の内容に応じて、旅館業、食品衛生、消防、建築、自治体の条例などの確認が必要です。既存の施設を引き継ぐ場合も、許可がそのまま自動的に引き継げるとは限りません。契約の前に、所管の窓口へ相談しておきましょう。
建物では、図面と現況が合っていない、増築部分の用途がはっきりしない、避難経路や消防設備、厨房、浄化槽の状態に問題がある、といったことが見つかる場合があります。営業できる客室数が想定より減れば収支も変わるため、許認可の確認と収支の試算は、行き来しながら進めるのが現実的です。
総投資額には、購入価格のほか、改修や家具、厨房、消防設備、設計、申請の支援、運転資金も含まれます。開業が遅れている間も返済や固定費はかかるため、その分の予備のお金も必要です。
INNsightで、候補物件に収支を当てはめる

ペンション経営の年収は、一般的な売上のモデルだけでは判断できません。客室数や営業日数、食事を出すかどうか、オーナーの住まい、改修、許認可、借入の条件を候補の物件に当てはめて、はじめて手元に残るお金が見えてきます。
INNsightは、民泊・旅館業に特化した物件売買サイトです。既存の宿泊施設や宿泊事業に使える物件について、許認可の取得状況や利回りなどの情報が掲載されている場合があります。候補の物件ごとに、この記事で紹介した売上・経費・返済の考え方を当てはめてみてください。
表示されている利回りや想定の売上には、返済や修繕、オーナーの人件費が含まれていない場合があり、その分を差し引くと、手元に残るお金は小さくなります。物件の一覧で候補は探せますが、事業の計画は物件ごとに立てる必要があります。なお、掲載情報は営業や収益を保証するものではありません。
| 比べること | 物件資料で見ること | 資料だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 買う・持ち続ける | 価格、管理費、建物の情報 | 税金・保険・修繕 |
| 宿泊に使う | 許認可・利回りなどの掲載情報 | 自治体・消防・規約 |
| 資金計画 | 物件価格・想定の収支 | 融資の条件・厳しい場合の試算 |
ペンション経営の年収のまとめ

ペンション経営の年収は、平均の数字よりも、客室数や単価、稼働率、借入によって大きく変わります。売上、事業の利益、返済後に残るお金、生活費に回せるお金は、それぞれ別の数字です。
家族の労働を0円で考えてしまうと、人を雇ったとたんに成り立たなくなる計画になりがちです。食事や接客で単価を上げても、材料費と手間が増えれば、手元に残る利益は思ったほど増えません。
実際に営業できる客室数は、許認可や消防、建物、設備の状態で決まり、それによって収支も変わります。手元に残るお金と暮らし方の両方が成り立つことが、長く続くペンション経営の条件です。
ペンション経営の年収でよくある質問
- ペンション経営の平均年収はいくらですか?
規模や地域、借入、家族の働き方による差が大きく、一つの平均では表せません。この記事のモデルでは、売上1,900万円に対して、返済後に残るのは260万円でした。
- 売上1,000万円なら生活できますか?
売上だけでは判断できません。食材費や予約サイトの手数料、人件費、修繕費、返済を差し引くと、手元に残るのは売上よりずっと少なくなります。世帯の人数と、何人で働くかによっても、暮らせるかどうかの答えは違ってくるでしょう。
- 夫婦2人なら人件費0円で計算できますか?
お金は出ていかなくても、働いた分の対価は発生しています。人を雇った場合の人件費を入れずに計算すると、事業の利益を大きく見積もることになります。
- 食事付きのほうが利益は出ますか?
単価を上げられる可能性はありますが、材料費や厨房の設備、衛生管理、人手、仕込みの時間も増えます。売上が増えても、手元に残る利益が同じだけ増えるとは限りません。
- 居抜きのペンションならすぐ営業できますか?
許可を引き継げるか、消防や建物・設備の状態、名義の変更などを確認する必要があります。前の許可が自動的に引き継がれると決めつけず、契約の前に行政へ相談しましょう。
- 稼働率が何%なら黒字になりますか?
単価、変動費、固定費、返済によって変わります。この記事のモデルでは、1室1泊あたり1.4万円が残り、固定費と返済が840万円の場合、稼働率約33%が、返済まで含めた黒字と赤字の境目でした。
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この記事についてのご注意
本記事は一般的な判断材料を整理したもので、特定の物件・契約・税務・法令手続の適否、収益、融資承認等を保証するものではありません。条件は地域・建物・契約・利用実態によって異なります。必要に応じて、行政、消防、金融機関、税理士等へご確認ください。
既存のペンションを買って改修するか、新しく建てるかで、かかるお金と開業までの時間は変わります。物件資料をもとに、自分の計画に合う方法を比べてみてください。
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