近年、訪日外国人観光客の増加や国内旅行需要の多様化に伴い、民泊事業への関心が高まっています。空き家の有効活用や副業としての収益確保を目的に、民泊開業を検討する個人オーナーや不動産投資家が増えている一方で、「どのような手続きが必要なのか」「法律上のルールは何か」といった疑問を抱える方も少なくありません。
本記事は、これから民泊を始めようとしている個人オーナーや、すでに物件を保有していて民泊運営を検討している方を対象に、民泊開業に必要な申請手続きと準備について実務的に解説します。
この記事でわかること
民泊開業の手順:物件選定から許可申請、運営開始までの具体的なステップ
民泊開業にあたり違法なこと: 無許可営業や条例違反など、法令遵守のポイント
民泊開業で必要な申請内容:住宅宿泊事業法と旅館業法に基づく届出・許可の違いと必要書類
この記事の執筆・監修者

■この記事の監修者
トライアド行政書士事務所
代表/行政書士 渡邊 雄一郎
旅館業・民泊許可申請に特化した行政書士事務所の代表。2014年より民泊事業に携わり、全国各地の物件の立ち上げを支援。開業準備から運営開始までを一気通貫でサポートする「民泊GO」を提供している。

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トライアド行政書士事務所
代表/行政書士 渡邊 雄一郎
旅館業・民泊許可申請に特化した行政書士事務所の代表。2014年より民泊事業に携わり、全国各地の物件の立ち上げを支援。開業準備から運営開始までを一気通貫でサポートする「民泊GO」を提供している。

■この記事の執筆者
ReINN株式会社/東急不動産ホールディングスグループ
民泊メディア編集部 マーケティングマネージャー
民泊領域に特化した専門編集チームとして、行政手続き・運営ノウハウ・物件選定など、開業から運営・売却までを一気通貫でサポートする情報を発信。営業現場で蓄積された実データと最新トレンドを基に、オーナーの意思決定を支えるコンテンツを企画・編集している。

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ReINN株式会社/東急不動産ホールディングスグループ
民泊メディア編集部 マーケティングマネージャー
民泊領域に特化した専門編集チームとして、行政手続き・運営ノウハウ・物件選定など、開業から運営・売却までを一気通貫でサポートする情報を発信。営業現場で蓄積された実データと最新トレンドを基に、オーナーの意思決定を支えるコンテンツを企画・編集している。
【免責事項】
・本記事における「民泊」とは、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、旅館業法に基づく簡易宿所営業、および特区民泊制度のいずれも含む総称です。
・本記事の内容は、2025年11月時点で確認可能な法令・制度・サービス内容等に基づき作成しています。最新の法令や制度、各サービスの詳細については、必ず各自治体や事業者の公式ホームページにてご確認ください。
民泊とは?
民泊の概要
民泊とは、住宅の全部または一部を活用し、宿泊サービスを提供する事業形態です。ホテルや旅館といった伝統的な宿泊施設とは異なり、一般住宅やマンションなどを利用して、旅行者に宿泊場所を提供する点が特徴です。
民泊の種類
民泊事業を始める際には、法律上の枠組みを理解することが重要です。日本国内で民泊を営む場合、主に以下の3つの法的区分が存在します。
- 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号、通称「民泊新法」)に基づく民泊
- 年間提供日数の上限は180日
- 届出制で、旅館業と比較した場合手続きが簡易
- 都道府県知事(保健所設置市等の場合はその長)に届出を行う
- 届出番号を記載した標識を公衆の見やすい場所に掲示する義務がある
- 旅館業法(昭和23年法律第138号)に基づく営業形態
- 旅館業の許可を取得すれば、年間を通じて営業日数の制限なく民泊を運営することが可能
- 許可の取得には、建築基準法や消防法の適合確認が必要
民泊の営業スタイルと始め方
民泊の営業形態は、家主が当該住宅に居住しながら一部を提供する「家主居住型」と、家主が居住していない住宅を提供する「家主不在型」の2つに分類されます。家主不在型の場合、住宅宿泊事業法では住宅宿泊管理業者への管理委託が義務付けられています。
物件の調達方法としては、①保有している物件で始める、②賃貸で民泊を始める、③物件を購入して民泊を始める、という3つのパターンがあります。区分所有であれば、管理組合の承諾が必要となります。賃貸物件で始める場合は、必ず貸主の承諾が必要です。
民泊に関する法規制
民泊事業を適法に運営するために、関連する法律を正しく理解しましょう。
住宅宿泊事業法(民泊新法)は、近隣トラブル防止のため年間提供日数の上限180日を設けています。自治体によっては独自の条例で営業日数をさらに制限する「上乗せ条例」が制定されている場合があります。
旅館業法は、年間を通じて営業したい場合や180日を超えて営業したい場合に利用されます。客室の延床面積や構造などの基準を満たし、保健所の許可を受ける必要があります。
民泊開業の手順
民泊開業の具体的なステップ
住宅宿泊事業法では、台所、浴室、便所、洗面設備を備えた「住宅」であることが要件です。
用途地域の確認も重要です。住居専用地域では旅館業は原則として建築基準法により認められません。住宅宿泊事業法に基づく民泊は可能ですが、自治体条例により営業日数や期間が制限される場合があります。また、防火地域・準防火地域では建物の構造が防火規制に適合している必要がありますす。
マンションの場合は管理規約で民泊が禁止されていないかを必ず確認してください。
また、旅館業法の許可申請には建物の検査済証が必要です。検査済証がない場合や既存不適格建築物の場合、許可が取得できない可能性があるため、事前に確認してください。
消防設備の設置
消防設備の設置が必要です。民泊施設では、原則自動火災報知設備の設置が必要となります。設置範囲や戸数、機器の種類は、面積や構造によって変わります。
また、消火器、誘導灯などが求められる場合があります。また、一定規模以上の建物ではスプリンクラー設備の設置が必要となる場合があります。必ず事前に所轄消防署へ相談し、具体的な設置義務を確認してください
そのほか、鍵の交換やスマートロックの導入、水回りの改修などが必要に応じて行われます。
衛生管理体制の整備
住宅宿泊事業法では、宿泊者の衛生確保のため以下の措置が求められています(住宅宿泊事業法第5条)
居室面積の基準遵守:宿泊者1人あたり3.3㎡以上の床面積を確保
定期的な清掃・換気:届出住宅の設備や備品等の定期的な清掃、換気を実施し、ダニやカビの発生を防止
寝具の衛生管理:シーツやカバーなど直接肌に触れるものは、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと交換
浴室の衛生管理:循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂)がある場合、宿泊者が入れ替わるごとに浴槽の湯を抜き、定期的な洗浄を実施
感染症対応:宿泊者に感染症の疑いがある場合は保健所に通報し、使用した居室や寝具の消毒・廃棄などの措置を実施
旅館業法の場合は、より厳格な衛生管理基準が適用されます。 これらの衛生管理を適切に実施するため、清掃代行業者との契約や管理マニュアルの整備を行うことが重要です。
| 住宅宿泊事業法 | 旅館業法 | 特区民泊 |
|---|---|---|
| ・民泊制度運営システムを通じてオンラインで届出が可能 | ・施設所在地を所管する保健所を窓口として、知事や区長等に申請 →申請後、保健所による施設の検査が行われ、基準を満たしていると判断されれば許可証が交付される | ・施設所在地を所管する保健所等の窓口を通じて、都道府県知事または政令指定都市の長に対し、特定認定の申請を行う |
| ・必要書類 →住宅宿泊事業届出書、住宅の図面、誓約書、登記事項証明書、転貸の承諾書(賃借物件の場合)、管理規約の写し(区分所有の場合)、委託契約書の写し(家主不在型の場合)、消防法令適合通知書、戸籍課で取得する身分証明書など | ・必要書類 →申請書、見取図、配置図、各階平面図、登記事項証明書や使用承諾書、検査済証、消防法令適合通知書、立面図、換気系統図、電気系統図、給排水系統図など ※無人運営するケースでは、フロント代替設備の概要書・運営体制の資料を求められるケースが多い | ・必要書類 →申請書、間取り図、設備概要、管理者体制図、消防法令適合通知書、管理規約承諾書(マンション等)、賃貸借契約書(賃借物件)など ※詳細は自治体により異なるため、事前確認が必須 |
家具家電の設置、アメニティの準備、価格設定と利用規約の作成を行います。繁忙期と閑散期の差を考慮したダイナミックプライシングの導入も検討に値します。利用規約(ハウスルール)を明確に設定し、宿泊者に事前に周知することでトラブルを未然に防ぎます。
Airbnb、Booking.com、Expedia、楽天トラベル、じゃらんなどのOTAに物件を登録します。複数のOTAに登録することで、より多くの宿泊者に訴求できます。物件の魅力を伝えるためには、明るく清潔感のある写真が非常に重要です。
住宅宿泊事業法に基づく民泊の場合、2か月ごとに都道府県知事等に対して定期報告を行う義務があります。報告を怠ると、業務改善命令や業務停止命令、事業廃止命令の対象となる可能性があります。
民泊運営開始前に、所轄消防署に「防火対象物使用開始届出書」を提出してください(使用開始の7日前まで)。
民泊の開業・運営費用
民泊の開業・運営においては、多岐にわたる費用が発生します。エリアや物件の状況、契約内容等によっても費用負担額も変わるので、都度相談をしながら管理することを推奨します。
また、国や自治体の補助金を活用することで費用負担を削減できる可能性もあるので、各自治体の最新情報をご確認ください。
費用の内訳
| 初期費用 | 運営費用 |
|---|---|
| 物件取得費用(購入の場合)または敷金・礼金(賃貸の場合) | 家賃(賃貸の場合) |
| 修繕費・リノベーション費用 | 光熱費(月1万円〜3万円程度) |
| 家具家電・アメニティの購入費 (ワンルーム〜1LDKで30万円〜100万円程度) | 通信費(月3,000円〜6,000円程度) |
| 許可申請・届出費用(行政書士依頼の場合:10万円〜30万円程度) | 清掃費(1回あたり3,000円〜10,000円程度) |
| 保険料(年間数万円〜十数万円) | アメニティの補充費 |
| 消防設備設置費用(ワンルーム〜1LDKで20〜50万円) | 管理手数料(売上の15%〜30%程度) |
| 広告費など | 保険料など |
民泊開業の3つの注意点
①地域の条例を理解しておく
住宅宿泊事業法では、自治体が条例によって事業の実施期間を制限する「上乗せ条例」が認められています。地域によって規制内容は大きく異なるため、事業を始める前に必ず自治体の担当窓口または公式ウェブサイトで条例の内容を確認してください。
②需要のあるエリアから物件を探す
民泊事業の収益性は立地に大きく左右されます。観光地へのアクセス、交通の利便性、ビジネス需要、既存の競合状況などを考慮し、需要のあるエリアを見極めることが重要です。ターゲットとする宿泊者層を明確にし、そのターゲットが実際に訪れるエリアを選定することが成功への第一歩です。
③賃貸物件は大家の許可が必要
賃貸物件で民泊を行う場合、必ず賃貸借契約上の貸主から民泊営業の許可を得る必要があります。無断で民泊を行うと、契約解除、損害賠償請求などのリスクがあります。
民泊開業成功の2つのポイント
売上を上げる施策 – ターゲットを明確に
民泊の売上は「稼働率 × 宿泊単価」で決まります。誰に泊まってもらいたいのかを明確にすることで、物件の設備やサービス、プロモーション方法を最適化できます。訪日外国人観光客、国内観光客、ビジネス利用者、大人数グループ、高級志向の旅行者など、ターゲットに応じた戦略が必要です。
複数のOTAに登録し、物件のクオリティを高めることも重要です。清潔さの徹底、快適な寝具、アメニティの充実、迅速なコミュニケーションなどが高評価につながります。
経費を効率よく回す – IT機器の活用
PMS(宿泊管理システム)やスマートロックなどのIT機器を活用することで、人件費を削減し効率的な運営が可能になります。PMSは複数OTAの予約を自動で同期し、ダブルブッキングを防止します。スマートロックは物理的な鍵の受け渡しを不要にし、遠隔で入室管理ができます。
よくある質問
- 上乗せ条例があるかはどう調べればいいですか?
自治体の公式ウェブサイトで「住宅宿泊事業」「民泊条例」などのキーワードで検索するか、保健所や観光課に直接問い合わせることで確認できます。行政書士への相談も確実な方法です。
- 住宅宿泊事業と旅館業、どちらを選ぶべきですか?
年間180日以内の営業で十分であれば住宅宿泊事業、年間を通じて営業したい場合は旅館業を選択することがおすすめです。また、自治体条例により住宅宿泊事業でも営業日数が大幅に制限される地域があるため、物件所在地の規制内容を確認した上で、事業規模や収益目標に応じて判断してください。
- 家主不在型の場合、必ず管理業者に委託しないといけませんか?
はい、住宅宿泊事業法では家主不在型の場合、国土交通大臣に登録された住宅宿泊管理業者への管理委託が義務です。ただ例外として、管理業務を業者に委託しなくてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められる場合は、委託不要となります。
民泊の開業ならReINNにご相談を
このように、民泊を始めるにあたって、確認すべき法律や必要な対応は多岐にわたります。
ReINNでは、事業性の調査・診断、法令・条例の確認サポート、申請手続きのサポートなど、民泊開業に関する包括的な支援を提供しています。
各オーナー様にあったソリューションをご提案可能なので、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。



