民泊や旅館業(以後「民泊」)など、無人宿泊施設の投資を検討していると、必ずぶつかるのが「どのエリアを選ぶか」という問いです。
「よく旅行に行くから土地勘がある」「知名度が高いから需要があるはず」「最近伸びていると聞いた」——
そうした理由でエリアを絞り込んでいる方も少なくありません。しかし、感覚に頼ったエリア選定によって思ったよりも収益が上がらず、「なぜここを選んだのか」と後悔するケースも珍しくありません。
本記事では、比較検討フェーズにある方が陥りがちな3つの注意点と、収益性を正しく比較するための判断軸を整理します。
この記事でわかること
- 民泊投資のエリア選定でよくある「3つの間違った選び方」とその落とし穴
- 収益性を正しく比較するために必要な「3つの判断軸」の考え方
- 自分の投資スタイルに合ったエリアの特徴を整理するためのフレームワーク
この記事の執筆者
【免責事項】
・本記事における「民泊」とは、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、旅館業法に基づく簡易宿所営業、および特区民泊制度のいずれも含む総称です。
・本記事の内容は、2026年5月時点で確認可能な法令・制度・サービス内容等に基づき作成しています。最新の法令や制度、各サービスの詳細については、必ず各自治体や事業者の公式ホームページにてご確認ください。
あなたはどのフェーズにいますか?
民泊投資を検討している方の中には、大きく2つのフェーズがあります。
「まだエリアが全く決まっていない」という初期段階と、「なんとなくエリアは絞っているが、本当にそこで良いのか確信が持てない」という比較検討段階です。
本記事は後者——エリアの候補はあるけれど、判断の根拠が感覚にとどまっている方に向けた記事です。エリアを絞り込む前に押さえておくべき視点と、よくある判断ミスのパターンをお伝えします。
「なんとなく絞る」が通用しない理由
不動産の購入は、エリアを一度決めると簡単には変更できません。物件取得後にエリア選定の誤りに気づいても、軌道修正には売却・再購入といったコストと時間が伴います。
また、民泊の収益性はエリアごとに大きく異なるため、感覚ベースの判断が外れたときのリスクは大きくなりやすい側面があります。「実物資産として残る」という安心感が、エリア選定への慎重さを鈍らせることがある点にも注意が必要です。
比較検討でよくある「3つの間違った選び方」
間違い①知名度でエリアを絞る
「有名な観光地であれば需要が見込める」という考え方は、直感的には理解しやすいものです。ただし、知名度と投資効率の高さが必ずしも一致するとは限りません。
知名度の高いエリアは確かに宿泊需要が見込めますが、同時に物件・土地の取得コストも高くなる傾向があります。高い宿泊収益を得ても、初期投資の回収に長期間かかるようでは、投資利回りとして見たときの優位性は薄れてしまいます。
さらに、有名エリアは競合も多く価格面での競争が生じやすい傾向があります。「需要がある」という状況と、「自分の物件が選ばれる」という結果は、必ずしも同じではない点にも留意が必要です。
間違い②好きなエリア・土地勘のあるエリアで選ぶ
「よく旅行に行くから、住んでいるから、土地勘がある」という理由でエリアを選ぶことは、運営上のコミュニケーションのしやすさにつながる面はありますが、収益性の根拠にはなりません。
民泊の収益性を決めるのは宿泊需要の強さ・競合状況・物件コストのバランスです。愛着も大切な要素の一つではありますが、それだけにとらわれず、収益性とのバランスを見ていくことも重要です。特に、思い入れのあるエリアで期待した成果が出なかった場合、精神的な負担につながる可能性もあるため、その点も含めて慎重に検討する必要があるでしょう。
間違い③「伸びているエリア」という情報だけを信じる
メディアやSNSで「注目のエリア」として取り上げられた情報をもとにエリアを選ぶケースも、よく見られます。しかし、情報が広く知れ渡った頃には、すでに物件価格が上昇していることも少なくありません。
「伸びている」という情報が価値を持つのは、まだ多くの投資家がそのエリアに気づいていない段階です。メディアに取り上げられた後では、参入コストが上昇しており、初期の投資家が享受したリターンをそのまま期待することは難しい場合があります。
情報の鮮度と自分の参入タイミングのズレは、民泊に限らず不動産投資全般で起こりやすい問題です。「今どのエリアが伸びているか」ではなく、「このエリアの現在の収益性と物件コストのバランスはどうか」を確認することが重要です。
3つの間違ったエリア選定パターン比較表
| パターン | 選定の根拠 | 問題のある判断理由 | 実際に起きやすいリスク |
|---|---|---|---|
| ①知名度重視 | 「有名な観光地だから需要があるはず」 | 知名度と投資効率は別物。需要の大きさと取得コストの高さが同時に上昇するため、利回りが見合わないケースが多い。競合の多さも見落とされやすい。 | ・初期投資の回収に想定以上の年数がかかる ・OTA上の価格競争で稼働率・単価がともに低下 投資利回りが大きく下回る |
| ②土地勘・愛着重視 | 「良く行く場所だから安心できる」 「土地勘がある」 | 愛着は運営の安心につながるが、収益性の根拠にはならない。民泊収益は需要・競合・物件コストのバランスで決まるものであり、個人の主観とは無関係。 | ・稼働率の弱いエリアを過信して稼働率が低迷 ・客観データなしで判断し、改善策が打てない ・収益悪化時の心理的ダメージが大きくなる |
| ③トレンド情報重視 | 「伸びていると聞いた」 「メディアで話題だった」 | 情報が広まった時点で物件価格は既に上昇していることが多い。参入タイミングと情報の鮮度がズレており、先行投資家のリターンをそのまま期待できない。 | ・高値掴みにより利回りが想定を大幅に下回る ・競合が急増し、市場環境が悪化したタイミングで参入 ・現在の収益性を検証せず、意思決定してしまう |
収益性を正しく比較するための「3つの軸」
エリア選定において、感覚に代わる判断基準として機能するのが、以下の3つの軸です。これらを組み合わせて複数のエリアを横比較することで、「なんとなく良さそう」から「数値で判断できる」状態に移行できます。
軸①初期投資の重さ(物件・土地コスト)
民泊投資の利回りは「いくら稼げるか」だけでなく「いくらで買ったか」によって大きく変わります。
同じ年間収益が見込めるエリアでも、物件取得コストが2倍になると、利回りは概ね半分になります。「稼げるエリア」と「投資効率が高いエリア」は必ずしも一致しません。物件コストの相場を把握し、期待収益と合わせた利回り試算が比較の起点となります。なお、数値例は物件の種別・築年数・立地により大きく異なるため、自身の候補物件の条件に基づいて試算することをお勧めします。
軸② 需要の強さと安定性
そのエリアで年間を通じて安定した宿泊需要が見込めるかどうかは、稼働率の安定性に直結します。需要が特定のシーズンに偏っているエリアでは、オフシーズンの収益が大幅に落ち込み、年間での収益計画が立てにくくなります。
スキーリゾートや海水浴場など、特定の季節需要に特化したエリアはリスクを考慮した上で選ぶ必要があります。一方、観光・ビジネス・ワーケーションといった複数の需要源が重なるエリアでは、需要の季節変動が緩和され、安定した稼働率が期待できる場合があります。
月別の稼働率推移データを確認することで、需要の偏り方を事前に把握することが可能です。
軸③競合の密度
需要があっても、競合する民泊・ホテルが多すぎると稼働率の確保が難しくなります。OTA上での価格競争が激化すれば、宿泊単価も下落しやすくなります。
重要なのは、需要の規模に対して競合がどの程度の密度で存在しているかというバランスです。周辺の民泊物件数と宿泊需要の両面を見ることで、「競合が多すぎて戦いにくいエリア」と「需要に対して供給が少なく有利に運営できる可能性があるエリア」を区別できます。
「投資タイプ別」で考えると選びやすくなる
3つの軸を整理したうえで、もうひとつ重要なのが「自分はどんな投資を目指しているか」という前提の確認です。投資の目的によって、最適なエリアの条件は変わります。
| 投資タイプ | 重視すべき軸 | 向いているエリア特徴 |
|---|---|---|
| 効率重視 | 初期コストの低さ | 物件価格が抑えられており、一定の需要が見込める地方リゾート |
| 安定重視 | 需要の通年安定化 | 観光・ビジネス・ワーケーションなど複数の需要源が重なるエリア |
| 成長狙い | 需要の伸びしろ | 市場がまだ薄いが、隣接する人気エリアから需要が波及しつつある地域 |
| 低コスト参入 | 初期投資の小ささ | 坪単価が低く、周辺の人気エリアの恩恵を受けやすい立地 |
※上表はエリア選定の考え方を整理するための参考です。実際の投資判断は、物件の個別条件・自治体規制・資金計画等を総合的に考慮してください。
どのタイプが自分に合うかを明確にしておくことで、エリアを比較する際の優先順位が定まります。「なんでも高水準のエリアが良い」というわけではなく、自分の戦略に合った条件を持つエリアを選ぶことが重要です。
自分で調べることの限界
3つの軸の重要性は理解できても、これらを自力で調べようとすると、かなりの手間と専門性が必要になります。具体的に何が必要かを整理すると。、以下のようになります。
- 物件コストの相場:エリアごとに取引事例を収集・比較する必要がある
- 需要の強さ・稼働率:予約実績やエリア別の稼働状況の分析が必要
- 競合密度の推移:物件数の変化を継続的に追う必要がある
- 季節変動の実態:月次・週次単位のデータを複数年分参照することが望ましい
- 自治体条例の内容:対象エリアの条例・上乗せ規制を個別に確認する必要がある
これらを複数エリアにわたって整理し、横比較できるようにすることは、個人では難しいケースがほとんどです。「比較可能な状態」にするまでには相応の労力が必要になります。
重要なのは「点」のデータではなく「比較」のデータです。あるエリアの稼働率だけを見ても、それが全国水準と比べて高いのか低いのか、近隣エリアと比べて優位性があるのかはわかりません。全国・県内・近隣エリアとの相対評価があって初めて「このエリアは割安か、割高か」という判断が可能になります。
よくある質問
- エリアに「正解」はありますか?
一概に正解はありません。投資家ごとに資金規模・リスク許容度・運営への関与度が異なるため、最適なエリアの条件も変わります。重要なのは、自分の投資目的に合った軸でエリアを評価し、数値に基づいて判断することです。感覚と数値を組み合わせながら、自分なりの根拠を持って選ぶことをお勧めします。
- 候補エリアがすでにある場合、どう検証すればよいですか?
本記事で紹介した3つの軸(初期コスト・需要の安定性・競合密度)に沿って、候補エリアのデータを確認することが有効です。特に、同じ条件で近隣のエリアと比較したとき、候補エリアが相対的に優位かどうかを確認することをお勧めします。「そのエリア単体で良さそう」という判断より、「他と比べて割安か」という相対評価が重要です。
- 「伸びているエリア」の情報は参考にしてもよいですか?
参考にはなりますが、情報をそのまま鵜呑みにすることは避けるべきでしょう。メディアやSNSで注目されたエリアは、その情報が広まった時点ですでに物件価格に織り込まれている可能性があります。「伸びているという情報がいつ時点のものか」「現在の物件コストと収益性のバランスはどうか」を必ず確認したうえで判断してください。
- 自治体条例の確認はいつ行うべきですか?
エリアを候補に挙げた段階で、必ず確認することをお勧めします。住宅宿泊事業法では自治体が独自の条例で営業日数を制限したり、特定区域での営業を禁止したりすることが認められており、これを見落とすと収益計画が大きく狂う可能性があります。条例は改正されることもあるため、物件取得前に最新情報を自治体窓口または公式ホームページで確認してください。
- 複数のエリアを同時に比較する方法はありますか?
本記事で紹介した3軸(物件コスト・需要・競合密度)を同じフォーマットで整理し、エリアを横に並べて比較することが基本となります。ただし、自力で複数エリアのデータを整理するには相応の手間がかかります。全国のエリアを一定の基準で横比較できるデータを活用することが、意思決定の精度を上げる近道のひとつです。
まとめ——”なんとなく”から”根拠のある選択”へ
民泊投資のエリア選定において、知名度・愛着・トレンド情報に頼った判断は、リスクを見逃しやすくなります。
重要なのは、①初期投資コスト、②需要の強さと安定性、③競合の密度という3つの軸で候補エリアを評価し、他のエリアと相対的に比較することです。
また、自分の投資スタイル(効率重視・安定重視・成長狙い・低コスト参入)を明確にしておくことで、エリア選定の優先軸が定まり、迷いなく比較・判断できるようになります。
エリアを”なんとなく”で決めると、後から見直しが難しくなる可能性があります。納得感のある判断を行うためには、比較しやすい形で整理されたデータをもとに検討することが大切です。
ReINNでは、エリア選定に役立つマーケットレポート・民泊コンサルティングを提供しています
エリア選定は、民泊投資における最も重要な最初の一手です。
「候補エリアが本当に自分の投資戦略に合っているか確かめたい」「他のエリアと比べてどうなのか客観的に評価したい」——そうした判断に、データに基づくサポートが力を発揮します。
ReINNでは、民泊・旅館業の新規参入を検討中の方に対し、エリア選定に役立つマーケットレポートや、包括的な民泊・旅館業コンサルティングを提供しています。
■マーケットレポート参考イメージ


また、東急不動産ホールディングスグループのReINN株式会社では、民泊の開業から運営までを包括的に支援しております。
- 「どのエリアが自分の投資目標に合っているかわからない」
- 「候補エリアの収益性を客観的に検証したい」
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このようなお悩みがあれば、ぜひReINNにご相談ください。エリア評価から開業・運営体制の構築まで、適切なコンサルティングをご提供いたします。











